2008年04月15日

レイソルサポにこそ読んでほしい「股旅フットボール」

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かねてより紹介中の宇都宮徹壱氏の著「股旅フットボール」が発売ということで、書評らしきものを書いてみたい。
僕はこの本を、レイソルサポやその他Jクラブのサポにこそ読んでいただきたい。それには理由がある。


Jリーグは「百年構想」を打ち出している。そしてレイソルは、J1というトップリーグ、つまり百年構想の中心、ひいては日本サッカー界の中心にいる。
つまりは百年構想を実現する先陣を切っていると言っていい。
しかしその1にいるのはJ1・J2あわせて33。おそらく日本サッカー全体の1%にも満たないかもしれない。

つまり、Jリーグというのは日本サッカー界の本当に頂点の僅か。


先輩風を吹かせるわけじゃないけど、僕がレイソルと初めて出会ったのはJリーグ以前、JFLに所属しているときだった。そのせいもあって、今でもJリーグ以下の下部リーグの同行にも注目している。
あのJFL時代を経験した方ならわかると思うが、Jリーグとそれ以下のリーグではあらゆる面で天と地ほどの違いがある。知名度、メディアでの扱い、行政の強力、スポンサー…。2006年のJ2の比ではない。

そんな中、日本国内のあちこちで「わが町にJクラブを」というムーブメントが起こっている。その主役となっているのは全国9地域リーグ、J1から数えて4部のチーム。
そこに宇都宮氏が現場から斬り込んでいくわけである。


4部のクラブを待っているのは、厳しい現実。
ネタバレとなってしまうために多くは語らないが、全国への挑戦権を得る大会に「仕事」で来られないなどという、Jのサポーターから見たら信じられないことがあったりする。

しかし本書はそういった厳しさのみを書いているのではない。そうした厳しい環境の中にも選手・スタッフ・フロントと立場は違えど「サッカー人」である人たちがみんなでクラブを支えて、上を目指して突き進む姿があり、それは僕たちJのサポが忘れていたものを思い出させてくれるような、読んでいてそんな気にさせてくれる。


そして僕がよくここに書き込んでいる、全国に打って出ようとする4部チームの最大の関門、全国地域リーグ決勝大会。本書でも余すところなく書かれている。「人生を懸けた戦い」として。

この大会および4部のチームが全国に出て行くにあたっての問題点については、僕と宇都宮氏では多少意見の違いはあるのだが、4部から3部、つまり地域リーグからJFLという全国リーグに羽ばたくための関門が、日本のカテゴリーの中で最も厳しいことについては論を俟たない。

本書では去年および一昨年の大会について書かれている。池元についての記述があるので、そういう意味でも注目していただきたい。
また、古参サポの方には懐かしい、選手時代にはレイソルの昇格に大きな足跡を残した戸塚監督についてもページを割いている。



僕がこの書をレイソルサポ・Jサポにこそ読んでほしい理由は2つある。

ひとつは、「Jのみで日本サッカーを語ることなかれ」。
Jリーグは確かに日本サッカーの中心であり、日本サッカーはJリーグを中心に回っている。
しかし冒頭に書いたとおり、Jリーグはごくわずかの頂点であり、そこだけ見ていても日本サッカーのごくごく一部を垣間見るだけである。

宇都宮氏はこの本を著すに当たり、ひとつの仮説を立てた。それもネタバレとなってしまうために詳しくは触れないが、この書は日本サッカーの「今」の姿を色濃くあぶり出しており、その仮説は実に正しかったことが証明されている。


もうひとつの理由は、僕たちが持っている柏の色、一心同体や柏バカ一代と同じものを、全国の人々が持っていることを知ってほしいからだ。

日立台が醸し出す昭和の色、ゲーフラのセンス、そしてレイソルの選手には力を、敵には脅威を与える「一心同体」。これらは僕たち柏レイソルのサポーターが育ててきた「柏の文化」だ。とかく首都圏と一括りにされてしまうが、ここには厳然とした「柏の文化」があり、それは全国に向けて発信されている。

全国の4部クラブのサポーターも、そういう文化を持っている。そして全国のあちこちからそれを発している。
そこには今までの日本の姿である「中央から地方へ」ではなく、「地方からの発信」という新しい文化の形が産声をあげており、そのよりどころとしてクラブがある。
それはJであれ地域リーグであれ同じことだ。

つまり僕らが日立台から全国に「柏バカ一代」を発信するように、地域リーグのサポーターも自分たちの町を発信しているのだ。そしてそれを全国に広げるために、Jリーグという舞台を目指している。

自分たちの文化を全国に発信したいという点では、Jも4部も同じだ。それを知ってほしい。カテゴリーに関係なく、自分たちを全国に発信したいひとが全国各地にいることを。
「股旅フットボール」にはそれが余すところなく書いてある。


百年構想の話に戻そう。「スポーツで、もっと、幸せな国へ」「あなたの町にもJリーグがある」という百年構想のキャッチコピーは、「地方の時代・地方の充実・地方からの文化発信」という言葉にも言い換えることができると思う。Jリーグのクラブは、程度の差こそあれ、それが何らかの形で実現する途上にあると思う。

しかし今、もしくはこれからJを目指すクラブはどうか。前述の地域リーグ決勝大会の狭き門も手伝って、Jはおろか全国に出ることもままならないところは数多くある。そして、地域リーグでくすぶっているうちに経営が行き詰るクラブもまた枚挙に暇がない。

本書には「地域リーグから見たJリーグ『百年構想』の光と影」というサブタイトルついている。Jクラブを「光」とするならば、地域リーグは「影」の部分が大きいだろう。
表紙カバーの写真は、JFL昇格の夢を絶たれて泣いている地域リーグの選手だ。このような多くの涙の上にJリーグと「百年構想」があるのが現状の日本サッカー界である。


ぜひレイソルサポ・Jクラブのサポに読んでほしい。そして日本のサッカー界の今後に思いをはせていただきたく思う。


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股旅フットボール
地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影

宇都宮徹壱・著/東邦出版社
定価(本体1,429円+税)

【目次】

いざ「百年構想」の最前線へ――/「股旅フットボール」著者による前口上

vol.01 イーハトーヴにJクラブを/グルージャ盛岡
vol.02 夢、すなわち目標/V・ファーレン長崎
vol.03「夢見る時代」の終わりに/ファジアーノ岡山FC
vol.04 加賀百万石のリアル「サカつく」/ツエーゲン金沢
vol.05 瀬戸の海を越えて/カマタマーレ讃岐
vol.06 凛としたクラブを目指して/FC岐阜
vol.07「人生を懸けた」アマチュアの大会/第30回全国地域リーグ決勝大会
vol.08 群雄割拠の湖国を行く/FC Mi-O びわこ Kusatsu
vol.09 変わりゆく風景の中で/FC町田ゼルビア
vol.10 北の大地で種蒔く人々/ノルブリッツ北海道FC&とかちフェアスカイ ジェネシス
vol.11「全社」という名のバトル・ロワイヤル/第43回全国社会人サッカー選手権大会
vol.12「J」の付く場所を求めて/第31回全国地域リーグ決勝大会

「謀反の物語」/「股旅フットボール」あとがきに代えて
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posted by SUN'S SON at 15:01| Comment(0) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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